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なぜって?チコちゃんは知っています。それは受信契約と受信者が紐づいていなかったから〜

自分の生い立ちについて書きますと言っておきながら、小学校のところで止まったまま一向に続きを書こうとしないジジイ・ブロガーです。本当に申し訳ありません。書いているうちに、やっぱり僕の生い立ちなんて誰も読みたくないよなあ、と思い始めました。

一番書きたかったのは自分は東京人なのか関西人なのか。要するに大阪生活が13年半。東京生活が53年。まあ数字だけ見ると生まれも育ちも東京なんですが、しゃべるのは関西弁だし、本人としても自分は大阪で育った、という不思議な状態にあります。そのことについて考えるために、自分の略歴を振り返って思い出話をしようと考えたわけですが、それもどうでもいい感じがしてきました。

で、ジジイの「思い出」話のほかにちょっとしたタイムリーな雑談をするための「トリビア」というカテゴリーを作りました。その第一弾が今日の記事です。

今、NHKを見ると「NHK ONEへ登録しましょう」というキャンペーンを盛んにやっていますよね。理事の黒崎めぐみさんまで顔出しで頑張っています。でもなぜそこまで力を入れてピーアールしているか、みなさん本当の理由をご存知ですか?「デジタル化の時代だから」ブー。「ネトフリやアマプラなどのネット系番組配信に客が流れていっているから」ブー。もちろんそれもありますが、それなら「NHK+」で十分ですよね。1週間前の番組も見られるし、1分遅れではありますが同時配信もやっている。

実際に僕も「NHK ONE」に登録して見てみましたが、結論からすると「NHK+」から何も変わっていない。見逃し再生は1週間まで、と変わってないし同時配信も変わっていない。プラスを見ていて視聴者が一番イラっとくるのは時々現れる「この映像は現在配信していません」というドーモくんのブレイク。まあ著作権とかのか絡みでネット配信の許可が降りなかったのでしょう。ゴルフの番組など、よくフタをされます。チャンネルを変えたくなりますよね。残念ながらこれも解消していない。だったら「NHK+」で十分でないの?

1週間前の10月1日からプラスが見られなくなる、というので慌てて「NHK ONE」に登録した人も多いのではないでしょうか?

なぜこんな手間をかけて「ONE」に移行しようとしたのか。NHKとしての本音はズバリ、受信契約と受信料のためです。

受信料はNHKの放送にかかる番組制作費、取材費、送出費などあらゆる費用の原資で必要不可欠なものすが、なんと今まで放送の受信世帯と受信契約の紐付けがされてなかった、というびっくり仰天の事実があるのです。アナログ放送から地デジに移行して多少は解消されたのですが、アナログ時代はひどいものでした。ざっくり言ってしまえば受信料を払わなくてもNHKの放送を見られる、という状態が長く続いたのです。

僕が若い頃は、受信料は払っていただくようにお願いする、という感じでした。NHKを見ているか見ていないかは、あくまで自己申告でした。だからあの気持ち悪い男、誰だっけ、タチバナ何某のように「NHKは見ていません」「受信設備はありません」と言い張れば受信料を払わなくても見られてしまう状態だったのです。同期が研修の一つとして受信料のお願いのために一軒一軒回る、というのを二日間やらされた時に「私はNHKを見ていません」という人がいて、ちょうどその時に大相撲の太鼓の音が聞こえ、ほら見てるじゃないですか。と言ったという逸話も残っています。

放送法改正によって受信設備のある世帯の受信料支払いが義務化されても、「うちには受信設備がありません」と言い張れば合法だったのです。ところが今回の「NHK ONE」ではスマホでも番組を見られるので、スマホを持っている人は全て「受信設備がある」とみなされます。NHKは大画面で4Kの高画質の放送を進めている一方で、スマホでも見られる、というのは僕の実感としては矛盾しているようにも思えます。誰が4Kの番組をスマホで見たいでしょうか?僕は老眼ということもあって、スマホで番組を見る気がしません。

スマホでも見られる、というのは受信料対策です。スマホを持っていない人は今時いませんから、一人一人にIDを振り分けることによって確実に個人に紐づけることができます。悲願だった完璧なペイテレビが実現したのです。

まあ僕個人としては、その受信料でご飯を食べさせてもらってきた人間、という立場上めでたい事だと言わざるを得ません。ですが普段ネトフリやアマプラしか見ない僕にとって、NHKの放送は朝と夕方のセブン(7時ちょうどに始まるニュース)とクロ現(クローズアップ現代)ナイン(ニュースウオッチ9)をチェックするだけのものです。これらは150人以上いる記者たちが地道に足で取材を続けてきた、かなりファクトチェックがなされた極めて信頼できる情報源と言えるでしょう。これらのストレートニュースは、民放のワイドショーとは比較になりません。

これだけのために受信料を払っても、その価値はあると僕は思います。あとはその他の番組が、視聴者を満足できるレベルになっているのかどうか、ですね。その点は現役世代の番組制作スタッフに、さらなる品質向上に努めてもらうしか、リタイアした僕から言うことは、他に何もありません。

編成上気になっているのは先ほど述べた2点。突然現れる「この番組は現在配信しておりません」とうドーモくんフタ問題。これは確実に視聴者にチャンネルを変えられるから、著作権料がいくらかかってもいいから無くすべきです。もう一点は4K画質の放送をスマホで見ろという矛盾。そして度々画面の端に現れるQRコード。これは本当に邪魔です。付加情報なんていらないから、画面いっぱいに本編を映してほしい、と言うのが僕のお願いです。僕はこのQRコードが大嫌いだという個人的な思いでしかないのかもしれませんが。

だってこのQRコードを読み取っても、スマホのサイトに誘導されるだけで、結局テレビの視聴に集中できない。人間はいっぺんに二つのことはできないのです。テレビを観るかスマホをいじるか。だから大画面で観るべきコンテンツは、気が逸れないように番組本編だけで観せてほしい。両方を欲張ると情報過多になってどちらも脳に届かない。どうも今のNHKの編成は、放送のデジタル化というものを履き違えているようです。

1993年、NHKに初めてインターネットを引いた男、である僕がいうのだから間違いはありません。僕がNHKにnhk.or.jpのドメインでIIJ社にお願いしてネットを引いた時、上層部はそんなモノ導入したら情報が漏れる、と猛反対しました。そこをなんとか交渉して、4つの番組に関して放送から2週間に限りネットの使用を認める、という御沙汰がおりました。許されたNHK初の番組は、僕が担当していた「週刊こどもニュース〜インターネットって何?〜」とNHKスペシャル「インターネットの時代」、若者向けの深夜番組、そしてあと一つはなんだったか忘れましたがこの4つの番組だけがネットの使用を認められたのです。

そのことを日本のインターネットの先駆けである、慶應大学の村井純教授(後のIIJ社の創立者)に伝えたところ「2週間ってなんだね。24時間365日つながっていてこそインターネットだ」と嘲笑されました。それでも僕はメール・アドレスを作って番組でのお便り募集に使いました。otayori@kdns.nhk.or.jpというセキュリティーも、今から見るとゆるゆるのメールサーバーを使っていました。(もちろん今はこのアドレスに送っても、メールは届きません。)その際にサブドメインが必要だということになり、池上彰さんと相談して「こどもニュースの略としてkdnsなら短くてよかろう」と言われ決めました。

当時はアメリカに「.edu」「.mil」「.gov」しかなく間もなく誰でも使える「.com」が使われ、さらに非営利団体のために「.org」が生まれました。

その後「国別ドメイン」というものが全ての国に与えられたのです。今のように様々なトップ・レベル・ドメインがなく日本は「.jp」だけでした。開発に携わっていたNTTの技術者は「.ntt」というのを強く希望して、名刺にも刷り込んでいましたが、認めれずに結局.jpだけかよ。とぼやいていたのを覚えています。最近では「.nhk」というのも使われているようです。進化しているのですね。

「.jp」は日本の団体が管理しており、当時は法人(営利団体)が使う「.co.jp」と非営利団体が使う「.or.jp」。政府機関が使う「.go.jp」インターネット関連組織の「.ne.jp」「.ad.jp」くらいなものでした。インターネットの黎明期は本当に選択肢がなかったのですね。僕は世界中で誰でも使える(その代わり競争率が高い)「.com」を登録して愛用しています。

話が逸れたので元に戻しますと、そういうわけで初期のNHKのドメインは「.nhk.or.jp」をまず導入したわけです。あんなにインターネットに消極的だったNHKが、今度は争ってネットの活用に乗り出しているとは、時代も変わったものだなあ、というのが僕の率直な感想です。そしてアナログ放送の時代は、受信料というのは自己申告であったため、集金人の方もたいそう苦労しておられました。

放送法改正によって受信料義務化の時代になっても、受信設備を持っていない、といえば逃れられるのでザル法でした。受信料を納めてくださる方々は、全くの性善説によるものでした。放送という概念は通信の対局にあり、基本的に不特定多数にばら撒かれるものだったからです。自治体の防災放送(東京では夕方5時になったら夕焼け小焼けがスピーカーから流れる)をイメージしていただければ良いかと思います。

そんな中で僕は新人時代は「受信料というのは神社のお賽銭みたいなものだね」と言われたこともあります。確かに言い得て妙です。神社にお参りしてお賽銭箱に百円くらい入れるものだと思っていましたが、確かにお賽銭を一円も入れずにお参りしても、誰かに怒られることもなければ、祟りがあるわけでもありません。あくまでも本人に良心の呵責があるかどうかです。僕はなんとなく百円くらいは入れないと落ち着かないので入れていましたが。

今回のNHK ONEで完全にペイ・テレビとして個人情報と紐づいた以上、これからはお賽銭気分ではいられません。たぶん受信料を払ってNHKを見る人と、全く見ない人に、二極化するような気がします。NetflixやAmazonプライムがライバルですから、コンテンツの質が今まで以上に問われます。制作陣にとってはかなり厳しい時代になっていくような気がします。

がんばれ。後輩たちよ!

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なぜ今NHK ONEなのか?”で1思考

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