Why "Mom Tomorrow" should not be taken off the air even if it is a bad movie

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先日このブログに、「明日ママ」を放送中止に追い込むことの愚、という記事を書いたら思いのほか反響があったので、ここでは論点を明確にするために編集権(編成権)というものについて書きたいと思います。これは表現の自由と圧力の問題なのです。

作品の出来不出来は関係ありません。編責(編集責任者)はいったん何かを表現し放送すると決めたら、最後まで腹を切る覚悟で責任を持って放送する義務があります。日テレの編成責任者にそれだけの覚悟があったのかどうなのか、それが今問われているわけです。

編成権について詳しくない方は、この記事であらかじめおさらいしておくとよいかと思います。
WIKIPEDIAによると「編集権の独立」=Editorial Independenceとは以下のように定義されます。

Editorial independence is the freedom of editors to make decisions without interference from the owners of a publication.

簡単に言うと編成権というものは、外部はもちろんのことオーナーにさえ口出しさせられない、神聖にして不可侵なものである。という意味で、ジャーナリズムにおいて言論の自由を保障する根本理念です。それだけの権限を持つからには、それ相応の無限の責任を負うことを意味しています。この根本原理が揺るがされると、表現者は権力者あるいは外部からの圧力に屈してしまい、意のままに操られる主体性のないものになってしまいます。それだけは絶対に避けなければなりません。

さて閑話休題。昨今問題になっている「明日、ママがいない」というドラマについて、僕が見た限りでの印象を書いておきましょう。(10回のうち、わずか最初の2回を見ただけで論評するのも僭越ですが)まず子役の芸達者なことに驚いた反面、演出については極めて稚拙な印象を受けました。こんな演出でドラマを成立させられるのかと不安にさえなります。野島慎司という脚本家を僕は個人的に高く評価しているのですが、今回は彼は脚本監修という立場であって、自ら執筆していませんし、トータルでの完成度はかつての野島作品にくらべてかなり劣る可能性が高い予感がしています。もちろん最終回まで見てみなければ最終的に判断できませんが、僕がもし日テレの編責なら絶対にOKを出していないでしょう。

話をもとに戻しましょう。前回のブログに書いたように、この番組には神聖な編成権があるにもかかわらず、放送中止を求めて外野が騒いでいます。主な主張は、差別によってこどもたちが傷ついたらどうするんだ、自殺者でもでたら、誰が責任をとるんだ、といったものでした。確かにこの拙劣な演出や言葉遣いは、僕もすすんでこどもたちに見せたいとは思いません。だからといって言論を封じ込めるような要求を放送局に対して、あるいはスポンサーに対して圧力としてかけるというのは、根本的に間違っていると思います。

筋違いといえば、ブログを書いた僕個人に宛てても抗議のメールが来ました。「あなたがたマスコミというのはひどい」というメールです。マスコミと一括りにされても困ってしまいます。僕は日テレの関係者ではありませんし、放送番組倫理審議会の委員でもありません。それはあたかもアサヒビールが不味いからと言ってキリンビールの社員に抗議するようなもので、思わず苦笑してしまいました。

ではもしこの番組を見て自殺者がでたらどうするんだ、という問題について最後にお答えしておきましょう。編責は青少年に影響を与えるであろう番組に対して、念には念を入れた検証をしているはずです。そのうえで放送を決定しているわけです。ですから極論を言わせてもらえば、たとえ100人の自殺者が出たとしても放送は中止すべきではありません。すべては編責のところに帰結します。ですから僕は「放送するなら腹を切る覚悟で放送して下さい」と書いたのであって、それは決して大げさな表現ではないつもりです。

日テレの編責がどなたか存じ上げませんが、編成権を行使する以上、言論の自由を守る責任とそれに付随する責任の重みを、今一度再確認していただきたいと思うのであります。


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