「MOZU」は名作だが地上波での再放送はやめよう

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TBSとWOWOWの共同開発ドラマ「MOZU」は今年のトップ異色作品といっていいだろう。ハリウッドばりとも言える羽住監督による大胆なアクション演出。主演の西島秀俊、香川照之、真木よう子ら役者陣の体を張った名演技。そして何よりも逢坂剛原作による「日本の公安警察」というテーマに真っ向から取り組んだストーリーをよくぞドラマ化したものだと、それだけでも拍手を送りたいくらいだ。まさに大人の鑑賞に耐える映画作品だと思っている。

番組が始まった当初、僕はこのブログに「MOZU」日本でもついに本格的なアクションサスペンスがと題して、このドラマを大絶賛する記事を書いた。面白くてたまらなかったのでWOWOWにも加入して最後まで楽しませてもらった。自分自身がそこまで楽しませてもらっておきながら、この期に及んで「地上波で再放送するな」「お茶の間に見せるな」と言い出すとは、ずいぶんと身勝手な主張だと思われるだろう。自分が楽しんだのなら他の人も楽しまれてやれよ、というのが人情というものだ。

その身勝手を承知で、あえて僕はこの10月にTBS系の地上波で「MOZU」が再放送されることに対して、ハッキリと反対の立場をここに表明したい。理由はいたってシンプルである。

・暴力シーン、残虐シーンがあまりにも多く番組に登場しすぎる。しかも過激だ。

僕は成長期のこどもたちに見せる映像として、暴力シーン、残虐シーンのもたらす悪影響は、極めて大きいと考えている。性描写などの比ではない。露骨な肉体的暴力、異常な残虐性を伴った殺人、細かく描写された拷問シーン、これらを繰り返しこどもの脳みそに焼き付けていくことは、やがて暴力や人の死に対する感受性を麻痺させ、正常な発育を妨げる可能性が高い。「MOZU」はレイティングでいうならR18+、アメリカならNC-17に匹敵するように僕は思った。

ちなみに「MOZU」では主人公たちが喫煙者で、不自然なくらい頻繁に喫煙シーンが出てくる。概ね肯定的な描写であるが当然カッコよくない。物語の本筋にも無関係である。主演の西島秀俊らはプライベートでは非喫煙者であり、演出のためにタバコを吸いまくる。今どき石原軍団でも禁煙をする時代に製作者陣はいったい何を考えているのか。このシーンにまゆを潜める人々も多い。

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僕には意図的に喫煙シーンを多用する製作者たちの本当の狙いがわかる。つまり「喫煙シーンを見せたくないような子どもたちには、そもそもこのドラマを見せないでいただきたい」という暗黙のメッセージなのだ。様々な事情で映画ではなくテレビドラマというメディアに載せることになった以上、できるだけドラマをこどもたちの目から遠ざけたいという、せめてもの善意なのではないか。あくまで僕の勝手な推測であり、好意的すぎるかもしれないが、そう信じたいという気持ちが僕の中にはあるのであります。それほどエッジを狙った、大人向けの「映画」作品であるという僕からの賛辞であります。

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