なぜGDPが数値のカルト信仰なのか、持続可能でないのか

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私達がニュースや国会中継でよく聞く、GDPとは何でしょうか。
GDPという一つの経済尺度が政治論争を支配し、政権の行く末を左右します。
まず、GDPの定義は、GDP(国内総生産)=最終生産物-中間生産物です。
ここで注意すべき点は、GDPは「1年限りのフロー」だということです。
目標とする数字では決してありません。
安部首相の「GDP目標600兆円」は間違っています。
内閣府が持つGDPは確固たる完璧な指標でしょうか。
家庭内だけでも完璧なGDPを作ることができるでしょうか。
目の前に、ペットボトルのお茶(160円)があります。
ペットボトルお茶160円(最終生産物)から、プラスチック包装、蓋、茶葉、水の代金(中間生産物)の代金を引いて、正しい情報を作り出すことが可能でしょうか。
人智を超え不可能です。
その点を踏まえ、GDPは数値のカルト信仰((注)a cult of the data)です。
右肩上がりの高度経済成長期までは、GDPは建築業など、それなりに上手く使われてきました。
しかし地球温暖化などの環境破壊に繋がったり、「豊かさを扱う指標ではない」と様々な問題が出てきました。
ある学者の会話によると「GDPの項目に(水素爆発した)原発処理が入っているのは当たり前」「戦争によってもGDPは上がる」です。
また、私達がよく使うツール、Googleとか、金融商品もそうですが、何を最終生産物するか中間生産物にするか分からなくなりました。
経済が物質的なものから形のないものに変わり、指標を見直さなければならなくなりました。
2009年、フランスで前サルコジ大統領が、ノーベル経済学者スティグリッツ、アマルティア・セン、ジョゼフ・フィトシと会議を開き、持続可能な新しい指標(beyond GDP、GDPを超える指標)を作り最終報告書を出しました。
この指標は国連等の国際機関で研究が進められています。
(注)2009年のスティグリッツ報告書の前文で、前サルコジ大統領がGDPを「a cult of the data」と記述しています。
  私なりに「数値のカルト信仰」と訳しました。
  参考文献を挙げておきます。興味のある方は是非読んでください。
参考文献
「Mis measuring our lives, Why GDP dosen’t add up」Joseph E. Stiglitz , Amartya Sen , Jean-Paul Fitoussi, The New Press
「GDP〈小さくて大きな数字〉の歴史,」ダイアン・コイル, 高橋 璃子訳, みすず書房

GDP――〈小さくて大きな数字〉の歴史
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なぜGDPが数値のカルト信仰なのか、持続可能でないのか”で5思考

  1. なるほど。そうなると「持続可能な新しい指標」というのがどんなものか、とても知りたくなりますね。僕たち一般市民でも見られる、GDPに替わる国別の経済指標が、もしあるようならば、ぜひ教えて下さい。

  2. GDPに替わる指標は、持続可能な経済成長を「幸福度」という観点から評価する
    「持続可能性指標(beyond GDP)」です。

    特徴としては、
    ・物質的な生活水準(所得、消費、富) 
    ・健康 ・教育、・
    ・仕事等などの個人的な活動、・
    ・政治への発言権と社会統治、またはそのための体制や方法
    ・社会的信頼
    ・環境
    などです。

    「Mis measuring our lives, Why GDP dosen’t add up」Joseph E. Stiglitz , Amartya Sen , Jean-Paul Fitoussi, The New Press

    には訳本がありますが、幸福度指標と訳されています。
    個人的にこの訳し方が好みではなかったので、持続可能性指標と記述しました。

    (amazonレビューでは訳が良くないと記述がありますが、これは訳者が悪いわけでなく、
     アマルティア・センが経済学者であり哲学者だと考えています。
     カントとロールズを理解しなければいけないからです。)

  3. ちなみにGDPは各国の自己申告です。
    上増していないか、「人工衛星を使い、都市部の深夜に電気がついて経済活動しているか」調べて推測しています。
    「はい?」と思われるかもしれませんが、経済学者ヘンダーソン等が考えた手法です。
    どの国も確固とした完璧な指標ではありません。

    またギリシャが財政破綻した決定打となったのは、計算方法を変えて「急に25%上昇修正したり」、IMFが改ざんしているのでないかと懸念して、ゲオルギフを送りこみました。
    それで正しい統計情報を作ろうとして、一気に財政破綻しました。

    1. GDPが各国の自己申告とは、言ったもん勝ち。ずいぶんいい加減な指標ですね。

      持続可能性指数の方は、既に実用化されて、発表されているデータを得られるものなのでしょうか?
      GoogleでGDPを検索すると、非常に豊富なGDPの国別データ等のグラフを見つけることができ、素人でもおおよそを把握することができます。新しい指標についてもグラフなどで知ることは可能でしょうか?

  4. GDPが確固とした指標でないのは、国により産業(例えば金融)の形体
    が異なる、というのも大きな理由です。
    その意味でも「GDPは数値のカルト信仰」です。

    持続可能性指標(幸福度指標(注)とよく書かれていますが)まだ試算段階です。
    内閣府でも研究が進んでいます。
    まだグラフ等では見ることはできません。

    今のところGDPと同時並行して、使われる可能性が高いと言われています。

    注)ISがイスラム国と訳されるように、幸福度指標と訳されるのも、私は適切
      ではないと考え、『「幸福度」という観点から評価する持続可能性指標』と
      記述しました。

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