携帯料金の値下げは本当に良い政策なのか?

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この3月、携帯大手3大キャリアが20GBで5分以内の通話込み2980円、という今までの半額近い料金プランを発表しました。菅政権の公約でもある携帯料金の値下げについて、無差別に友人たちに感想を聞いてみました。

10人中9人が歓迎だと、携帯の料金が下がるのはありがたい、と答えました。もちろん僕自身だって、携帯の料金は安い方が嬉しいに決まっています。ですがここに恐ろしい総務省のポピュリズムの罠が仕掛けられていることを、あえて10人中9人を敵に回してでも、指摘しておきたいと思います。

なぜポピュリズム(大衆迎合主義)は危険なのか。そしてどうしてそれは起こるのか。それがよく分かる例が先日、僕が週刊ポストに取材された、NHK受信料値下げをめぐる論議です。

週刊ポストは、読者1000人アンケートの結果、80パーセントの人がNHKの受信料を値下げすべきだと答えた、と記事にしています。それに対して値下げしなくて良い、という論者の代表として、僕が晒されています。

このNHK受信料を値下げせよという、80パーセントの意見は世論なのか? いや世論などではない、ということを私は指摘しておきたいのです。週刊ポストは控えめに80パーセントとしていますが、おそらくアンケートをとれば国民の99パーセントはNHK受信料を下げて欲しいと答えるでしょう。

誰だって公共料金は安い方が良いに決まっています。電気代だってガス代だって水道料金だって安い方が良い。できればタダであってくれればなおさら良い。税金だって、できれば払いたくない。それは生活者として当たり前の感情であって、世論などではないのです。

そこにつけこんで、大衆を支配しようというのがポピュリストたちの罠です。菅政権の携帯料金値下げという公約は、まさにその罠の典型なのですが、なかなか理解している人は少ないようです。

先ほどの僕の友人へのインタビューで、10人中1人だった貴重な少数意見によると、今、携帯電話料金は下げるべきタイミングではない、というのです。

今は5Gの技術の熾烈な国際競争の場にあり、10年後の6Gも見据えてIT業界はギリギリの状態にある。このままではGAFA(アメリカの4大IT企業)に飲み込まれ、あるいは中国の台頭により、日本の業界は危機的状態の中で勝負に出なければならない。

docomoの完全NTT子会社化という動きもありましたが、NTTに力を集約してでも、国策としてこの危機を乗り切らないと日本のIT産業は致命的な敗北を喫するということです。呑気にau、SoftBankと値下げ競争などしている場合ではない、国内で潰し合ってどうするのだ、と彼は言うのです。

政治家はそこまで見据えて国策を練るべきです。安易に大衆のご機嫌取りの政策を出してくるようでは、お先真っ暗なポピュリスト政権と言うしかありません。

ここまで書いてきても、やはり携帯料金は下げて欲しい、という気持ちは揺るがない人がほとんどでしょう。わが家もお財布が厳しいので、安い料金プランが出たら、そちらに乗り換えるでしょう。

でももし僕が政治家だったら、と考えます。もし僕が総務省だったら、と考えます。NTTやSoftBankに国際競争力を着けさせるべく、施策を練るでしょう。昭和の自民党や官僚たちは、そのようにして日本の経済力を国際的に高めました。

今の政権になぜそれができないのか。我々有権者も、飴玉につられる子供のような、安易な発想でポピュリズムを容認してはならないのです。ポピュリズム(大衆迎合主義)は、民主主義に潜む最も大きな罠であると、常に警戒することを忘れないようにしたいものです。

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