ジャングルの中を7時間、象に命を預けてたどり着いたのが、アカ族の村でした。現地ガイドのバムくんが「こちらが「アカ・ビレッジ」です。こちらでいいですか?と聞いてきました。アカ族もリス族もこっちは何も知りません。タイのミャンマーとの国境あたりに少数民族がいくつかある、という程度の知識です。

もちろん二つ返事でOKと答えました。人口200人くらいの集落です。どこからがアカ族の村になっているかは、これがちゃんと分かるのです。入り口には、日本の鳥居に似た2本の柱が立っています。こんなもの門と呼んでいいのでしょうか。と思いつつも柱の間を通って、アカ族の村に入ります。

「今夜はこちらの家に泊めてもらいます。夕食はすぐに作りますから」というとバムくんは何やら調理を始めましいた。これは何というたべものですか? と聞くとバムくんは「スパゲティーです。欧米のお客様がいらしたときの、特別な高級料理です」と答えました。

そういうんじゃなくて、地元の人が食べている普段の食べ物が知りたいんだ。と私が言うと、バムくんは笑いながら答えました。「そんなもの、文明国から来たお客様の口には、絶対に合いませんよ」私はちょっと拍子抜けしましたが、バムくんの善意に従うことにしました。

さて、謎のアカ族流スパゲティーは、15分から20分くらいで出来上がり、高床式になっているその家に私は招かれました。家族が5人か6人、車座になって座っている中に、私も座るように言われました。すぐにバムくんは大きな皿に山盛りになっている(3人前くらいか)アカ族風スパゲティーを私の前に置き、どうぞ、と勧められました。

ちょっと多いな、と笑いながら、私はいただきました。お味の方はなかなか悪くない、日本で出されても素直にいただける料理でした。でも量が半端ない。出された料理をちゃんと完食しないと、失礼にあたるよな、と思いつつも私は「アイム・フル」「グッド・テイスト・バット・イナフ」とバムくんに伝えました。

その前に私は周囲をもっと観察するべきだったのです。とんでもない失敗をやらかしました。バムくんは私の目をじっと見て「イナフ?」と確認するように聞きました。「イエス、イナフ」

すると彼は私にあった食べ残しの皿を、家長らしき男性の前に置きました。家長はそれを半分くらい食べ、それからこどもたちへ、順番に回して家族で平らげました。

しまった。あの皿は、家族全員分の料理だったのだ。そういうシステムだと知っていたら、無理して満腹になるまで食べるべきではなかったのに。そう思いつつも皿は家族全員の前をめぐり、タイミング良く床下に現れた猫に、皿を渡しました。猫は待ってました、とばかりに皿をなめ尽くし、皿は洗う必要がないくらい、きれいになりました。

なかなか合理的なシステムではないですか。床下には猫だけではなく、牛や馬そして鶏が放し飼いになっていましたが、人間には逆らう気はなさそうです。まあ象を使いこなす人々ですから、驚くには値しません。

バムくんは私たちを、隣にある別の高床式建物があり、僕ら二人分の布団がしいてありました。私は枕元にナイフを置き、寝る用意をしました。

その時です。バムくんが現れ、「デザートは召し上がりますか?」と私に聞きました。夜もまだ早い、というかまだ夕方です。私はあれほど満腹になるほど食べたのに、好奇心から「ぜひ」と答えました。バムくんは「僕がギターを弾きますから」といい、すぐ隣にある、先ほどの母屋にデザートを食べに出かけました。

ここから先は長くなるので、次回に詳しく書きます。

(つづく)


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