六本木二丁目〜今も続くGHQ体制〜
今回アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプ大統領が来日して大きな話題になっています。日本としては日米安保条約がありますから、最大の同盟国であり、最大級の歓迎をするのは当たり前のことです。その態度には、天皇陛下に謁見するのにジャケットのボタンを閉め忘れたり、陛下を指差して「グレイト・ガイ」と言ったり、日本人の僕から見ると不遜な印象も感じられましたが。
警視庁からは1万3000人、全警視庁警察官の3分の1を動員して厳重すぎるほどの警備に当たりました。まあ超要人の警備ですからさもありなん、という気がします。高市早苗新首相は、大統領専用機マリーンワン(海兵隊のヘリコプター)に同乗させ、わざわざ呼び寄せた米海軍の空母ジョージ・ワシントン船上で歓迎するなど、米側もサービスいっぱいでした。
原子力空母の上で米兵たちに囲まれて、満面の笑顔だった高市早苗首相は、トランプ大統領にとっては子供をあやすように御し易い相手だったことでしょう。そんなことで日米交渉が務まるのか、という意見も散見しましたが、周りの閣僚たちはなかなかの強者を揃えており、これまた問題ないでしょう。マリーンワンに同乗したことを批判する意見もありましたが、じゃあ小泉純一郎だったら同乗を拒否するのか、あるいは民主党政権だったら拒否するのか、と言われればやはり同乗したと思います。
なぜなら日本は宗主国アメリカの属国だからです。
太平洋戦争で歴史的な敗北をし、無条件降伏というポツダム宣言を受諾したのが1945年。ご存知の玉音放送のあった8月15日です。時々勘違いしている人がいますが、日本が正式に終戦したのはその日ではなく、それから7年後の1952年のサンフランシスコ講和条約です。それまで7年間という長きにわたって、日本はGHQ(連合国総司令)というアメリカによる一方的な支配を受けていました。
そこではプレスコードという、報道にあたって「日本の惨状を語らない」「原爆について語らない」といった規制が敷かれていました。今でも日本のメディアは、規制こそないものの、空気感としてこのテーマに触れることを避けることが多いようです。
日米地位協定(合同委員会)、横田空域(東京の上空をアメリカが支配している)といった言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。1952年からさらに7年後に、僕は生まれました。だからそんなに昔のことではありません。関係ないけど高市早苗は僕と同い年で、学部こそ違え、なんと神戸大学の同期でもあります。とにかく日本のメディアはGHQ支配下にあった7年間の話題を、腫れ物に触るように避けているのです。
安全保障条約(安保)についてもしかり。安保闘争という学園紛争が大きなうねりとなったことも、歴史の片隅に追いやられています。誰もがなんとなく避ける話題、というのが報道現場の空気として定着しているようです。僕自身はアメリカ合衆国の政府機関で働いたことがあり、その時はアメリカ式の呼び名を強要されました。まさにGHQそのものだと感じました。
赤坂にあるアメリカ大使館の中は、廊下ですれ違う職員を見る限り、若い女性兵士がガムを噛みながら肩から下げた機関銃をガチャガチャ言わせて歩いていて、とても日本とは思えませんでした。まあそれがお国柄というものでしょう。ロシア大使館の隣にはアメリカンクラブという、さらに高いビルが立っていてロシア大使館を見下ろす位置にありました。表向きは娯楽施設ということですが、CIAの暗躍を想像したのは僕だけでしょうか。
東京港区にはそんな米軍施設がたくさんあり、ニュー山王ホテル、という謎の施設もありました。名前はホテルですが、実際はホテルではなく米海軍のための施設です。そんな例は枚挙にいとまがありません。
ちなみに僕の本籍地は、東京都港区六本木一丁目にあります。六本木といっても静かなところで、地下鉄南北線の六本木一丁目駅があるくらいです。隣はスウェーデン大使館でした。米国大使館とサウジアラビア大使館から等距離にあり、時々そこから発せられる強力な電波のせいでしょうか、携帯の電波が途切れるという迷惑な一面もありましたが、基本的には閑静な立地です。
皆さんが六本木というと思い浮かべるのが、六本木ヒルズなどがある六本木駅周辺でしょう。このあたりは六本木三丁目や六本木四丁目です。飲み屋やカフェといった商業施設はだいたいそのあたりに集まっています。で僕が指摘したいのは、なぜ六本木一丁目があり、六本木三丁目や六本木四丁目があるのに、六本木二丁目はないのか。そしてそれに関する話題が出ないのか。
それは六本木二丁目は米軍基地だからです。
メディアではあまり取り上げませんが、近所に住んでいるとすぐにわかります。なかなか広大な敷地面積を持ち、米国大使館にも近い便利な土地です。このようないわば租界ともいえる場所は、都心部にちゃっかり用意されているのです。さらに沖縄、横須賀など有名なところばかりではなく、調べてみるといたるところに米軍施設はあります。このことから僕は、今なおGHQの体制が続いていると言わざるを得ません。
だから今回の首脳会談でも、決して対等な立場で交渉するのではなく、極論すれば属国と宗主国の会談でしかない気がします。別に高市早苗首相が無能だからではなく、米側に阿っているからでもなく、これは日本人全員が認識すべき課題です。あるいはマッカーサーがコーンパイプを咥えて飛行機から降りた瞬間から始まって、今なお続いているということを、メディアはもっと取り上げるべきです。このような報道の自主規制は、いつか国民が自分で自分の首を絞めることにつながりかねません。
今回のニュースでは単に「トランプ大統領は羽田空港に降り立ったエアフォースワンからマリーンワンで六本木に向かった」と言うにとどめ、米軍基地とはっきり言葉にしていませんでした。これからは米軍基地という用語と説明を、ちゃんとしてもらいたい。そして閉ざされた7年間のことを、しっかりオープンにしてもらいたい。でないと「自由で開かれたインド太平洋地域」という言葉も、中に浮いてしまいます。高市さんもオッサンたちの力を借りながら、物珍しさと見栄えだけの政権から、自分の力で考えるよう成長を遂げてほしいと思います。
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