スノーデンファイルに見るネット時代のプライバシー

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snowdenfileまあ僕は、今回ガーディアン紙が騒いでいるように、携帯での通話、メールからチャット、SNSまで一般個人の会話がNSAに監視されていたと聞いたって別に驚きはしない。もともと僕はインターネット上で個人のプライバシーが守られるなんて、はなから信用してないからだ。それにしてもこのスノーデンファイルの事実は衝撃的で、本を一気に読んでしまった。情報活動に興味のある人のみならず、ネットを使うすべての人にお勧めの一冊だ。

911以降のアメリカの安全保障体制は、いろいろと批判もあるけれども、テロ対策という大義のもとに特別扱いされているのはご存知の通り。それがドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴したり、なんでもないアメリカの一般市民同士の通信まで、大手IT企業ぐるみで完全に傍受できる体制を作っているとなると、果たして本当に必要なのかという疑問が僕には残る。

スノーデン氏の好きなところは、ウィキリークスなどと違って反体制的ではなく、純粋に国益を考えつつ一般市民のプライバシーを懸念して暴露している点だ。国家機密をむやみに漏洩しても誰のメリットにもならない。だが我々のメールやチャットが米国NSAによって読まれているというのなら、せめて「読んでいますよ」とそのことくらい告白していただいても良かろう。こっそり読まれているというのは、誰だって気分のいいものではない。そればかりかIT産業の発展にも悪影響を与えかねない気がします。

僕個人について言えば、ネット上にプライバシーはない。冒頭にも書いたように、はなからあきらめている。立場上から米国連邦政府のリストにあるので仕方がない、というのもあるけど、まあいずれインターネットは体制側のツールになるだろう、という諦観があったのも事実です。諦観からスタートしているから、それなりに用意周到に自分の発言には気をつけてもいます。もちろん誰に読まれてもいいようなことしか書かない。そしてあえて公開してもいい個人情報を開示することによって、本当のプライバシーは守っているわけです。

「木を隠すなら森に隠せ」ということわざがあります。木を一本だけ田んぼの真ん中に置いておいたら目立ってしょうがない。倉庫に入れても隠しきれません。ですが森の中の無数の木の中に紛れ込ませてしまえば、探し出すのは困難になります。防諜活動においても同様のことが言えるのではないでしょうか。インターネットは膨大な情報の森です。個人情報についても必死で鍵をかけてロックしようとするのではなく、むしろ数ある無数の個人情報の中にさりげなく紛れ込ませてしまう。そうすれば結果的に抽出することが難しくなるでしょう。

ちょっと話を戻しますと、米国NSAのやり方があまりにも非効率的に思えてなりません。フォートミードの巨大なサーバーを管理するのも大変だし、ハワイのクナイのトンネルも働いている人はさぞかし能力が必要でしょう。そもそもPRISMのような膨大な情報量を扱うとなると、多くは機械にやらせるとしても、最後は人海戦術に頼らざるを得ないと僕は考えています。誰が一体コンピュータースクリーン上を流れる無数の情報を監視し続けるのか?

テロ対策室はドラマ「24」のジャックバウアーのようにカッコいいものではなく、バージニア州では一人当たり3つのモニターを担当させられた係員が、びっしり机を並べて黙々と作業にあたることでしょう。その姿は「24」というよりも「女工哀史」を僕に思い浮かべさせます。そのような仕事はごめんこうむりたいものです。

それよりもなによりも、米国NSAと組まされたグーグル社、アップル社、マイクロソフト社、ヤフー、フェイスブック、ツイッター、AOL、などなどのIT企業たちが、自らの企業イメージを好ましい方向に持って行くことが難しくなり、産業の発展を妨げることになりやしないか。それがアメリカの国益に反するのではないか。とまあ、よその国のことまでおせっかいだなあ、と自分でも思いつつもスノーデンファイルについて読書感想文を書いてみました。

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