なにがG7だ、何がグローバルサウスだ、と先日のブログ「G7は既にその意味を失っている?」で散々毒づきましたが、このところの各国の経済成長率や人口をみれば解るとおり、今後の世界のリーダーは、間違いなくインドです。

人口は14億2千860万人。ついに中国を抜いて世界一に躍り出ました。中国はかつての一人っ子政策の影響で、少子高齢化が進んでいます。そして人口動態調査のグラフ(すみません日本や中国のグラフと並べてみせれば良かったですね)を見ると、ビックリするほどきれいな、若者人口の多い典型的な経済成長の形を見せています。

基本的に人口の増えている国は経済も発展し、人口の減っている国は経済も低迷する。というのが原則です。だから日本も少子化対策に躍起なのです。インドのGDP(PPP)は、ちょっと目を離しているすきに、ここ5〜6年だと思いますが急成長を遂げ、アメリカ、中国についで世界第3位になりました。

働き手も優秀で大勢います。アメリカの科学者の12%、医師の38%、NASAの科学者の36%、マイクロソフトの従業員の34%、IBMの従業員の28%、インテルの従業員の17%、ゼロックスの従業員の13%がインド系アメリカ人であり、NASAの科学者の10%がアメリカ国籍を持たないインド人です。

インド人の多くは英語を話します。公用語はヒンディー語ですが、長かったイギリス統治時代の影響で、1億人ほどが英語を第一言語として使っています。かなりなまりのある英語で、ヒングリッシュ、と揶揄されることもありますが、はたして日本に英語を使える人が1億人もいるでしょうか。

軍事支出は、2018年では、665億ドルで、GDP比で約2.4%支出しており、世界で4番目でした。徴兵制はとらず、志願兵のみでも軍事支出は、7,659,800万米ドル。2021年の支出はアメリカ、中国についで世界第3位です。もちろん核兵器保有国で、軍事目的での宇宙開発、核の3本柱(Nuclear triad、ICBM、SLBM)戦略爆撃機の整備、ミサイル防衛システムの開発など多岐にわたります。現在は武器の国産化を急いでいます。

関係ないけど、映画の年間製作数もハリウッドをこえて世界一です。こんな超大国をなぜ新興国と呼べるのでしょうか。IT分野においては、先進国と呼んでいいと思います。いや超大国です。隣国パキスタンをはじめ、多くの国境線を持っていますし、15種類もある公用語、複雑な宗教事情のために、相当苦労しているとは思われます。今回のウクライナ侵攻に関して、簡単に欧米側につくことなく、モディ首相は中立の態度を見せました。

きっとどちらのグループに入らなくても、自力で一つの国としてやっていける。超大国としての自信を僕は感じました。ただモディ首相に関しては、非常に危険な人物だと思っています。民族義勇団という極右の団体の出身でインド人民党との人物です。民族義勇団(RSS)とは「ヒンディー教至上主義」がモットーです。インドにおける過激なイスラム差別やガンジーの暗殺者を愛国者とする歴史修正などを行っています。

マハトマ・ガンジーと言えば、非暴力非服従を掲げてインド独立をはたした、有名な建国の父です。そのガンジーは、1948年に民族義勇団メンバーのナトラム・ヴィナヤック・ゴドセによって暗殺されました。拳銃によって、胸を3発打たれたのです。

このゴドセを愛国者としてまつり挙げたのが、モディ首相です。銅像を作ったり、ドキュメンタリー映画『Desh Bhakt Nathuram Godse』(「愛国者ナトラム・ゴドセ」の意)が、ガンディー暗殺の日にあわせて公開されたりしました。こういった歴史修正主義者を僕は許せません。

国民の8割がヒンディー教徒であるインドにおいて、ヒンディー教至上主義が支持されるのは、当然かも知れません。しかし権力による歴史修正はいかがなものでしょうか。

僕はインドと日本には共通点が2つあると思います。

  • 極東国際軍事裁判(東京裁判)において、インド代表判事パール判事は、「イギリスやアメリカが無罪なら、日本も無罪である」と主張した。唯一の国である。
  • キリスト教やイスラム教、仏教といった世界宗教ではなく、その一国でしか通用しない特有の宗教が信じられている。(インドにおけるヒンディー教、日本における神道)

なんとなく上手くやっていけそうにも思います。なんといっても世界一の人口を持ち、経済的にもぐんぐんと成長を続けるインドですからね。冒頭で触れた人口動態調査のグラフにも、将来の成功を約束する、理想的な形が現れています。日本は真逆ですから、今から少子化対策を高じても、間に合うのかな、という疑問が残ります。

###

2023年6月5日追記:

いまさらですが、2022年の日本、アメリカ、中国のグラフもアップしておきます。大切なのは今現在ではなく、数十年単位の推移と傾向です。労働人口と高齢者人口のバランスです。「ピラミッド型」「つりがね型」「ツボ型」「逆ピラミッド型」と若年人口の多い順に分類されます。「ピラミッド型」はまだまだこれから伸びる状態。「つりがね型」は今絶頂期で経済も安定し、経済成長には理想的です。「ツボ型」はまだ労働人口も十分あるものの、少子化が進み経済は後退局面に入った危険な状態です。「逆ピラミッド型」は(まだ見たことがありませんが)国として破綻している状態です。引退した高齢者ばかりで、稼げる労働人口は少なく、将来労働人口になるべき子供たちも産まれていない。必然的に財政は破綻するしかない。と言うわけです。

それではまず日本。典型的な「ツボ型」ですね。65歳以上の高齢者が多いのが目立ち、それに比べて15歳未満の数は…。

アメリカ。なんとか「つりがね型」を保っています。

中国。絶頂期の労働人口は50歳から59歳であり、この人達は10年後どうしているか。また5歳未満の人口が激減しているのが気になります。

そして先ほども申し上げたとおり、重要なのは現在の状況よりも、何十年単位での推移です。日本の推移を見てみましょう。

すみません。インドの話をしていたのに、人口ピラミッドの画像を追記していたら、話がそれて日本の超少子高齢社会の話になりそうです。これについては後日また改めて記事にしますので、今日はインドの話で終わらせて下さい。

###


See more of Yoshihiro Sugie OFFICIAL

Subscribe to receive the latest posts by email.

Your Comments

This site uses Akismet to reduce spam. For more information on how comment data is processed, please click here.