なぜ支援物資は滞るのか
熊本市には多量の支援物資があり、集積所である陸上競技場には、仕分け配送のボランティアもかなりの人数いるのに、避難所には届いておらず、かつ需要と供給にミスマッチがある。
なぜか?
仕分けを指揮する役所の職員がいないのだという。この事態は、災害対策マニュアルにしたがっている役所ではどこでも起きる普遍的な問題である。
役所のマニュアルを見ればわかるが、まず「組織図」から始まっている。本部長(首長)を頂点とする役割分担図である。つまり「誰が」「どんな任務を担うか」が書かれている。しかし「何を」「いつ」「どうするか」に関する記述は貧弱であるか、そもそも書かれていないことが多い。実際に災害が発生すると、「誰がするか」ということは問題にならない。「いつ何をどうするか」だけが問題になる。
「何をどうするか」がしっかり書かれていれば、「誰が」するかはどうでもいいので、役所の職員の手が足りなければ、災害救援NPOやボランティアに「丸投げ」しても「感謝」されても「文句」はでない。これは、役所=官僚組織に共通する悪弊で、典型的な例は「福島第一原発事故」に見ることができる。「現場でなすべきこと」より「組織の秩序」が優先されるのである。これが「責任者がいないからできない、わからない」となって、冒頭の物資とマンパワーと時間の無駄に直結する。
大災害という「効率と生産性」が最優先で求められるときに機能しない役所=官僚組織、そこに依拠する「似非」マニュアルは、まことに有害といわねばならない。官僚意識は幹部ほど強いから、彼らの指揮能力や意識を変えることはあきらめて、マニュアルを検討して「いつ何をどうするか(=飲食などのアルバイトマニュアル的な)」に書き直さないと(場合によっては「裏マニュアル」でもよい)いけないだろう。
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ysugie
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ざっくりとした担当分けくらいは必要ですが、災害時には職位職責は関係ありません。全員が一作業員となる特殊な体制ですから、確かにアルバイトマニュアルのような、すぐに誰もが動ける仕組みのほうが有益でしょうね。
やれる人ができることをする。それが誰でもかまわない。
津波でも、「津波だ逃げろー」と叫びながら誰でもいいから逃げることが重要だと指摘されています。
じっさい「責任あるひとが言わないと逃げない」では死にますね。
「責任者・担当者がいないから」というのは正常性バイアスのひとつではないかと思います。
ハンディカムによる記録係がいないのもいただけない。
皆が忙しく時には罵倒されるときでもひたすら記録に徹する厳しい役回りだが、記録がないと事後に検証改善ができない。
記録は「上手くいった」ところはマニュアルに載せ、上手くいかなかったところは「研修」に使える。
あとぜひ必要なのは「報道係」。
マスコミ取材対応やネットへの情報提供を一元化する。首長はテレビに映りたがるだろうが、「本部長」なのだから「首長の肩書きが必要な」仕事に専念していただく。
人当たりと滑舌のよい人が取材に対応する。発表する情報も報道係スタッフが選ぶ。
こういった、補給系統の作業は、自衛隊が得意だろうと思う。組織と手段と人員を持っているから。災害時には自衛隊と消防と警察の統合指揮所を開設して、制服のトップがロジスティックの指揮をとるのが良いと思う。なんといったって、指揮系統の一元化が結局効率がいい。
愛知県も、県庁が使用不能になったら、臨時災害対策本部は「県営名古屋空港=航空自衛隊小牧基地」置くのがよいだろうと思っています。
庁舎の建物は無事でも、事務室内は什器備品の転倒防止などされておらず、備えておかねばならない事態でしょう。
救援物資は熊本市運動公園に一括して集約し、区役所に配送してから、避難所へということを改めるんですって、区役所を省いて直送ですって。
「最初に組織図があった」という、まるで神話の冒頭みたいな感じが、ここにあります。
Amazonが作った「支援用品サイト」のアプリを自治体に売って、支援物資に二次元バーコードか、電子チップを入れて読み取り機で読んで、入れ出しを記録して常に最新在庫を表示するようにすべきでしょう。
ダメなマニュアルは「組織図」から始まる以外にも見分け方がある。
場合分けができていない。
地震(直下型と海溝型にも)と大雨(さらに台風を付け加える)は事情がまったく違うので分けられていないのはダメ。
勤務時間内と時間外に別れていないのもダメ。
時間内も時間外もメリットとデメリットがある。それぞれを評価して備えないとつかえない。
あとは場合別に別れたマニュアルを使うためのチャートを作ればよい。
最後に、毎年更新されている形跡のないのもダメだ。小さな災害は毎年あるしそのたびにチェックしていれば当然更新される。更新されていないのは「職務怠慢」である。
マニュアルは「最新の記録」であり、「当面の行動手順」であり、「反省・更新のたたき台」である。
マニュアルを軽視する組織には、自分たちが何をやっているかもわからないから、当然「改善」はなく同じ誤りを繰り返す。