「業務上知り得た情報」の壁
このブログは、一部の皆さんが期待しているような、報道ブログではありません。情報源のほとんどはマスコミなどで、既に報道されている二次情報です。個人がニュースソースの一次情報を得ることはほぼ不可能です。マスコミでは150人あまりの記者が各現場に張り付いて、必死で一次情報を集めています。僕たちはそれに対抗するつもりは毛頭ありません。
僕たちはそんな二次情報を元に、(もちろん事実関係の正確さはできるだけ確認しますが)それを見て杉江義浩はどう感じたのか、何を思ったのか、を伝える目的で書いています。執筆陣である坂井万利代さんは勇気を持って一次情報も提供してくれました。桝本隆さんも、仲宗根雅則さんも独自の視点で、事実をどう解釈すべきなのか、新鮮な感想を記事にしてくれました。
さてmixi時代も含めて20年近く細々と続けているこのブログですが、僕自身が責任者として、いくども壁にぶつかりました。最初に壁の存在に気がついたのは、YouTubeが始まった頃です。では動画でもアップするかな、と考えたけれど、僕がアップできる動画など1本もないのです。部屋の中にはとても面白い動画、ぜひ皆さんに見て頂きたい動画が、山ほど転がっていますが、僕が著作権を保有する動画は一本もありませんでした。
さらにこの「杉江義浩OFFICIAL」という個人ブログの存在さえ、否定される危機にもぶち当たったこともあります。かなり昔ですが、上司から呼び出され、このブログのプリントアウトされた紙を見せられました。
表現の自由があるから、こちらから閉鎖せよとは言わない。ただ組織として大きな問題になっているのは事実だ。どうするかはあなたが決めてください。
もちろんブログは閉鎖もせず、修正もせず、今まで通りに続けています。僕の最初の書籍「ニュース、みてますか?」が上梓された時も同様でした。僕は組織に不利益が生じるような記事は一本も書かず、むしろ組織を擁護するスタンスで執筆してきました。長年お世話になり、育ててくださった職場に対して、恩義というものがあるからです。
でも組織からすると、そういう問題ではないのでしょう。僕が組織と交わした契約に違反している、ということであり、たぶんこの二つの条項でしょう。
- 乙が企画、演出、制作等に関わった番組等の著作権は、すべて甲に帰属する。
それはそうでしょう。僕が一人で企画し、演出し、制作したと言っても、それにはカメラさん、音声さん、照明さん、美術さんを含め、組織の膨大なスペシャリスト、クリエーター達の力がなければ作れません。まさに組織の総合力ですから、「僕が作った番組」などと軽々しく口にすべきではないのです。それは理解しているので、迷うことなく署名捺印しました。
- 乙が業務上知り得た情報は、決して口外してはならない。退職後も同様とする。
これには若い頃よく理解ができておらず、ちょっと首をかしげましたが、仕事に就きたい一心で署名捺印しました。まあスクープネタなど入手できたとき、他社に教えてはいけない、という意味だろう。くらいの解釈をだったのです。しかし年月が経ち退職した今、これはすごい条項だと気がつきました。
業務上知り得た情報、ってなんだろう? 全国を駆けずり回って取材した情報、上司や同僚に教えてもらった演出のスキル、たびたび原稿に朱を入れられ身につけた正しい日本語、居室に届けられ、毎日のルーティンとして読み込んだ新聞記事、組織の端末で調べたネット記事、それら全てが「業務上知り得た情報」に当てはまるのではないか。
一度だれか僕の脳みそを、かち割って見て欲しいです。その100パーセントが「業務上知り得た情報」であることがわかるはずです。こちとら30年以上にわたって、組織のために尽くし、朝から晩まで情報の渦の中で過ごしてきたのです。本屋に立ち寄って読みたい本があっても、仕事の資料となる本を優先し、自分の読みたい本はあと回しにしてきました。
業務上以外で知り得た情報と言えば、妻に教えてもらった大根の皮むきスキルくらいです。それ以外は墓場に持っていけ、という意味でしょうか。つまり生涯何も書くな、って言うことでしょうか。もちろん僕だって何が書いて良いことで、何が書いてはいけないか、の判断くらいできます。
ずいぶん昔、組織の報道端末を使い、未公開の記事として書かれていた企業情報を元に株式の売買をして、私利私欲を満たしていた職員が逮捕された事件がありました。インサイダー取引ですね。報道端末には、公開と非公開のフラグがあって、非公開というのは事実関係が未確認である、あるいはなんらかの理由で、その時点での報道は不適切である、という意味です。
その情報を利用して自己の利益のために使ったのだから、こういうのは「業務上知り得た情報」の悪用です。取り締まるのは、そういう悪質なものだけに限ってもらいたい。僕だって放送直前に局長級の判断でお蔵入りし、永久欠番となった機密の抜群に面白い番組テープを預かっています。当時の上司から「局に置いておくと危険だから、ディレクターが責任を持って自宅に持ち帰ってくれ」と指示されたので、今は我が家の金庫の中にあります。もちろんYouTubeなどに公開する気は全くありません。
そういう機密に関しては、人道上徹底的に守る僕ですが、それ以外は僕が個人的に思ったこと、感じたことを(たぶん業務上知り得た情報も含めて)書いて行きます。ここは報道機関ではなく、個人の熱い思いを伝えるためのブログですから、真相究明など期待しないでください。冒頭にも書きましたように、扱うのは主に二次情報です。信頼性を求めるなら、大手マスコミのサイトを見てください。
ブログの掟
ではまた!
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