テロに屈さないとは(東南アジアとEUの違い)

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テロに屈さないとは(東南アジアとEUの違い)

22日、iSが起こしたベルギーの空港の同時テロで、EUは深刻な脅威にさらされました。EUは共同声明を発表し、「テロとの戦いで団結する」と表明。国連も非難声明を出しました。今回のテロで大変残念ながら日本人2名も巻き込まれました。1月にはジャカルタで、「東南アジアにおけるISの指導者の立場をという自分の主張を立証するため」に、ISはテロを起こしました。インドネシア市民は「我々はテロを恐れない」と結束し、その後、ジョコ・ウィドド大統領は「ジャカルタは既にいつもの状態に戻っている」と宣言しました。フランスと全く異なる対応です。なぜ、インドネシアとEUは対応が異なるのでしょうか。

以下は”ISIS Reaches Indonesia”, Joseph Chinyong Liow, Foreign Affairs Report, No3 2016,pp60-64の要約に,なります。(「ISのインドネシアにテロが及んだことについて」ジョゼフ・チンヨン・リョー(イスラム政治学者、ブルックリンズ研究所シニアフェロー))

まず結論から書きます。現時点でのISのメッセージは、社会的立場、経済的権利を奪われ、社会の周辺に追いやられているイスラム教徒がターゲットです。ISのメッセージは EUのイスラム教徒にはアピールしても東南アジアでは、訴求力はありません。その理由は、東南アジアでISに刺激されているジハード主義集団は、一貫性がなく「自分がリーダだ」と主張し、揉めています。またISに参加した、インドネシア人は100万人あたりわずか1.4人。それに対し、フランスは100万人に対し18人。オーストラリアでは14人。また、東南アジアの過激集団もIS流の暴力路線は、割り切れぬものを感じています。また、ISがリクルートした東南アジアの数は約45%は女性と子供です。インドネシアの過激組織とISの戦術的な同盟関係を結ぶ戦術的な同盟を結び可能性が今のところは低いのです。それを踏まえ、インドネシア市民、ジョコ・ウィドド大統領は冷静な対応をしました。「見事な対応」とジョゼフ・チンヨン・リョーは評価しました。とはいえ、安心できるものすべきではない。(要約終わり)

現段階では 日本の過激組織が仮にいたとしても、ISとの親和性は低いと、私は考えています。また、、元内閣官房副長官補の柳澤協二さんよると、「陸上自衛隊の現有勢力を派遣可能な部隊規模は一個大隊600人程度であると思われる」。IS対策が地上戦になるにあたり、「敵を見たら撃つ。躊躇なく引き金を引く訓練だ」。米軍は約10万人。米軍対比0.6%なら、自衛隊の方が派遣されなくていいと思います。

さらに、憲法改正で頭がいっぱいの安倍首相の口癖は「国民の皆様には負担をかけたくない」です。空前の大赤字に関わらず予算は無限大。注)内閣府の公開資料(平成27年6月30日閣議決定)等によると、消費税率引き上げは延期の予定です。これ以上、支持率を下げる、(明治時代が古き良き日本の)憲法改正まっしぐらの安倍首相にとって不利なことはしない。立憲主義は浸透していないと、主権者である国民が自衛隊を監視できるような土壌が育たないと、桝本さんが投稿された記事、特攻隊の背景、一億玉砕のような凄まじい全体主義になる可能性もあります。インドネシアの対応と同様に、冷静でいるのがベストである。テロに屈さないとは、通常通りに生活を送ることだ、とは考えています。

注)日銀が市中に出た国債を買い、政府は財源としてまかなっています。
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10 thoughts on “テロに屈さないとは(東南アジアとEUの違い)

  1. 杉江さんの記事「恐怖のジハード最終戦争「イスラム国」が核を持つ時」
    に、コメントで書きましたが、ベルギーの同時テロは元々原発の予定だと
    本日25日に、各報道機関が発表しました。(最悪です。)

    EUは今、深刻な脅威にさらされ、パニック状態です。
    しかし、これがジョゼフ・チンヨン・リョーによると、IS(正確に書けばテロ組織)
    の狙いで、政府を過剰反応させるのが狙いです。

  2. 冷静になるべき、と書いた理由は他にもあります。世界銀行では「一人当たりの
    GDPがランキング」されています。昨年末の日経新聞によると、日本は、OECD
    34か国中20番です。イスラエルに2014年は抜かれました。
    (震災の後に原発処理で上がったとしても、評価されるようなものではありません。)

    また、フランスでバカロレアを取り、アメリカで博士号をとったフランス人が、
    親日で観光に日本に来ても「Chinaは大丈夫?」とメールが来ます。
    フランスでは、日本と中国は東アジアでひとくくりなのです。(漫画家の
    ヤマザキマリさんもイタリア人は日本と中国の区別がつかない、と描いています。)

    しかし、私の意見だけで閉じるような問題ではありません。懸念される2020年の
    オリンピック等など、他の方の記事を期待しています。

  3. 誤謬訂正 1行目 is →IS
           7行目 「ISのインドネシアにテロが及んだことについて」→
           「ISのテロがインドネシアに及んだことについて」
           16行目 ISの戦術的な同盟関係を結ぶ戦術的な同盟を結び→
                 ISの戦術的な同盟関係を結ぶ
    (失礼しました。)

  4. ISの目標は、アッバース朝の領土の、最低でもオスマントルコの領土を回復すること。
    はるか東方のアジアなど眼中にないのです。現在において関心があるとすれば戦闘員のリクルートつまり人的資源輸出国であればよいのです。
    ISは「敬虔」さは微塵も無さそうなので、平然と人種差別的態度をとるでしょう。かつての地中海世界の覇者であったイスラム帝国幻想にひたる彼らにとって、アジア人など「爆弾のキャリア」であればよいのです。
    インドネシアやマレーシアを勢力下にすることにはまったく興味はないと思います。

  5. 僕もISの目標はオスマン帝国の再現であるので、地中海世界には覇権を広げたいが、東南アジア、東アジアには興味がないと思います。ただテロリストはオウングロウで、中央からの指示がなくても勝手に行動します。インドネシアはその例でしょう。

    それを含めて考えても、日本に十字軍的な敵愾心を持つことはないと思います。(彼らは日本もターゲットだと声明を出していますが)

    それより何より極めて狙われる可能性が高いのは、伊勢志摩サミットです。もちろん警備が厳重な会場自体を爆破することはないでしょう。欧米首脳が集まる国でそのタイミングでテロを起こすことに意味があるからです。ベルギーでもEU本部付近の駅が狙われました。重要なのはタイミングです。場所は東京などの人の集まる
    ソフトターゲットで十分でしょう。

  6. インドネシア市民、大統領を「見事と」評価し、論文を書いた、ジョセフ・チンヨン・リョー
    (イスラム政治学者)は最後に、「リスクシナリオ」を書いています。

    「本当の危険は、ISの黒い旗が世界各地にたなびくことでなく、ISの出現によって、
    インドネシア国内のジハード主義者や過激派のネットワークに、フィリピンや
    マレーシアのが過激派が参加し、さらなる社会暴力が引きおこされるだろう」。

    私が「現時点では」冷静に対応すべき、と「現時点」と書いた理由は、今後、
    IS対策が地上戦になり、どうなるか全くわからないからです。
    現時点は、インドネシアのジハード主義者、他の過激組織は「自分がリーダー」
    だと揉めていて、一貫性がなく、東南アジアでは訴求力はありません。

  7. 昨年末にパリでのISテロ、またアフリカのマリ等で、「緊急事態」が
    宣言されました。
    多くの国の憲法の「緊急事態」は、「戦争に巻き込まれた際に、立憲主義
    を守るために、一時的に立憲主義を停止するもの」です。
    「緊急事態」が現行憲法にないのは、日本は戦争を永久に放棄して、
    「陸軍その他の戦力」を持たないところまで踏み込んで規定を置いた
    第9条2項があるからです。
    緊急事態に自然災害が盛り込まれているのは、ポーランドとドイツだけです。
    「自民党の憲法改正草案にダメ出し食らわす」小林節、伊藤真、合同出版
    P116より)

    緊急事態の記事をどなたか挙げてくれないでしょうか。

  8. ISの戦略目標が、欧米先進国世界の分断と疑心暗鬼、対立による不安定化にあるとすれば、その弱点はアジア各国、あるいは日本でも例外ではないでしょう。
    フィリピンのミンダナオ島、マレーシアやシンガポールのような多民族国家はもちろん、中国を含め「少数民族問題」を抱えていない国はないのです。
    日本で分断が起きる芽は、たとえば「在特会」のような排外差別主義を標榜する団体の暴発から広がる在日外国人との分断です。
    たとえば「在特会」が自作自演のテロを起こし、在日朝鮮・韓国人の仕業だと騒ぎ、ついでにイスラム教徒を誹謗するとなれば、対立と分断は思ったより簡単に日本に広がるでしょう。

    格差が広がるということは、中の下から底辺にいる大勢が限られたパイを奪い合うという事態に他なりません。自分の分け前を奪われたという「怨みや理不尽感」は、先鋭化し戦闘的になりかねません。
    ツチ族とフツ族が争ったルワンダ、セルビア内戦、かつてのドイツ国民によるユダヤ人迫害と、人類歴史の大部分を占める「常態(平和共存時期がむしろ例外)」といってもよいところがまことに不気味です。

  9. >その弱点はアジア各国、あるいは日本でも例外ではないでしょう。

    「インドネシアにおいては、既にISの支持者、シンパ(政治的思想に賛同し信奉
    者となった人)がいます。しかし、「ISに忠誠を誓うことはあっても関連組織を
    立ち上げていません。しかも過激派組織それぞれが、『自分がリーダ』だと
    揉めています。訴求力もなく、ジャカルタでのテロはプロの仕事ではなかった」。
    というのが、政治学者、ジョゼフ・チンヨン・リョーのリサーチの結果です。

    >ただテロリストはオウングロウで、中央からの指示がなくても勝手に行動します。

    「専門家は中東にいるISの指導者が、テロ攻撃を命じたか、今も議論している。
    今のところインドネシア人の命令で、インドネシア人が決行したテロだった」。

  10. ベルギーでのテロリストの活動状態を見聞きすると、池波正太郎の「鬼平犯科帳」に代表される江戸盗賊のやり口を想起します。
    小説の中での盗賊には決まったパターンが有り、まず江戸市中に「盗人宿」といわれる拠点を点在させ、そこでごく普通の町人生活(時には大工などの職人であったりもする)をおくる、盗みに入る商家を慎重に決め、決まったらそこへ「引き込み」と呼ばれるスパイ=決行日までに、金の在処や店の主人使用人の行動パターンを調べ、最後には鍵を外し盗賊を引き込む、金蔵の鍵は専門の鍵師が複製作りを担当する。
    ヨーロッパでのテロリストはまことに古典的な方法を使っているのです。
    では「火付け盗賊改め方」という「町奉行所」とはちがう「特殊犯罪対策部隊」は、地道にしないをパトロールして怪しい人物や兆候を探る、もと盗賊を使いおとり捜査をする、徹底した尾行と張り込みをする、決行日という一瞬に「一網打尽」をかける、とまあこういうことになり、これも現代テロ対策警察・軍・諜報機関の手法とほぼ同じです。
    「ほぼ」の部分は、潜入協力者の有無でしょう。

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