超ベテランの橋本環奈(25)が朝ドラのヒロイン
「奇跡の一枚」と言われたこの写真が地方アイドルファンによって撮影されたのは、10年以上前の話です。2014年頃から彼女は爆発的に売れ、アイドルとしてまた女優としてキャリアを積んできました。
芸能人としてはベテランの部類に入ります。福岡県警の一日署長を務めたり、NHK紅白歌合戦の司会を3年連続でつとめたり、通常だったらベテラン芸能人がなるような立場を、橋本環奈は十分にやってきました。それがなぜ朝ドラのヒロインとして、高校1年生を演じているのか?
普通だったらNHKの朝ドラは、全くの新人をオーディションで見つけてヒロインにし、厳しい撮影現場でゼロから一人前の女優まで育てる。それが朝の連続ドラマの魅力でした。何も10年選手をそこに据える必要はないはずです。
BK(JOBK=NHK大阪放送局)のドラマ制作チームは、いったい何を考えて今の「おむすび」を作っているのだろうか。僕は最初の2週間くらい観ながら考えました。1シリーズごとに東京と大阪が交代で朝ドラを作ります。なので今回は事前に観ることもできませんでした。
で自宅でNHK+を利用して一気に観ました。やっぱり役にあっていない。非常に違和感がある。そんな印象が正直いってありました。ズバリ言って橋本環奈は演技が上手い方ではない。そこだけは新人らしさがあります。
映画「セーラー服と機関銃」「千と千尋の神隠し」など名作のリメイク版で主役を経験しているのに、いったい彼女は何を学んできたのか。いいんです、演技が下手だろうと、アイドルなんだから。問題は朝ドラのヒロインに彼女を据えたBKの制作陣です。
いまさら橋本環奈の人気にあやかろうというのか。自分たちでオーディションを開き(これが非常に大変な作業ではあるが)新人女優を育てる、大切な任務を放棄したとしか思えません。「おむすび」の第一話では制服のまま川に飛び込む、濡れ役をさせられました。
何かの禊ぎでしょうか。名作「あまちゃん」能年玲奈さん以来の濡れ役です。でも水から上がってきた彼女の、メイクの取れた顔はやはり25歳の女性の顔でした。気の毒になり正視できませんでした。何を考えてBKのプロデューサー、ディレクターは彼女を抜擢したのか。
僕は10代の橋本環奈さんに遭ったことがありますが、何とも言えない不思議な魅力をオーラのように発している美少女でした。まずおそろしく小柄です。身長150センチあるかないか。今は子役と女優の区別がなくなっている時代ですが、決して子役というわけではありません。
中学生ならもう十分に大人の女優という時代に、橋本環奈は男子なら誰もが「可愛い!」と引き込まれる、類い稀なる美少女特有の空気を身にまとっていました。これは多くの美少女を見慣れているはずのプロデューサーでも、一瞬クラクラっと血迷うくらいのレベルでした。
なるほど。これで身長150センチの美少女が、大人たちを引き摺り回してきたんだな。と納得がいきました。でもそれが通用するのは二十歳までの話です。25歳を過ぎた彼女が果たしてどんな道を歩んでいくのか。一度は朝ドラの洗礼を受けて、演技を身につけるのか。消えるのか。
これは彼女にとって最後のチャンスです。朝ドラの現場は厳しい。ある朝ドラのヒロインが言っていました。「朝に放送されるから朝ドラじゃなくて、朝まで撮影が続くから朝ドラなのね」。橋本環奈にもここでRebornして欲しいものです。この「奇跡の一枚」の魔力がいつまでも続くわけがないのですから。
ついでながら言っておくと、僕は朝ドラの魅力は昭和の現代史を描いて観せるところにある。そう思ってきました。大河ドラマでは平安時代、鎌倉時代、江戸時代もしくは明治維新まで。昭和以降の現代史は朝ドラでしか描けない。
昭和史にはなんといっても第二次世界大戦を挟んだ、戦前と戦後があります。戦争そのものは描かなくても、その時代に生きた女性たちの生活や、周囲の男性たちの暮らしぶりを描くのは、朝ドラの大切な役割だと思っています。
朝ドラ「トットチャンネル」の時、黒柳徹子さんが、あらー私の時代も歴史になっているのね、と笑って仰っていましたが、確かに昭和史ではあります。戦後の厳しさもしっかり描かれています。これはNHKにしかできない重要なミッションだと僕は思っています。
東日本大震災を描いた「あまちゃん」は例外として、朝ドラでは戦前戦後を必ず挟むべきです。ギャルがどうしたこうしたとか、ヤマンバギャルのような平成の風俗は、はっきり言ってどうでもいい。平成を描いても面白くもなんともない。スマホの代わりにガラケーが使われていたくらい。
そんなものは歴史でも現代史でもない。日本人として記憶に収めなければならない太平洋戦争をすっ飛ばしてドラマを作るのなら、民放に任せればいいし他のドラマ枠でもいくらでも放送できる。朝ドラと大河ドラマはNHKにしか作れない、特別なミッションがあることを、今一度はっきりさせておきたいのです。
次作の東京制作の連続ドラマは、この辺りをしっかり踏まえて作られることを期待します。でないと面白さではネトフリに敵わないのだから。
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