文系的に言ってレアアースって何?
今、中国とアメリカの交渉で争点になっているのは、レアアース問題とフェンタニル問題です。レアアース? フェンタニル? 突然そのようなカタカナが出てきては僕たちも面食らってしまいます。フェンタニルは超強力な合成麻薬の名前で、要するにモルヒネの100倍以上の強さ。シャーペンの芯の先ほど摂取しただけで死に至るものです。これはケシから取るのではなく、安価に作れてしまうのでタチが悪い。
このフェンタニルの材料を、どうやら中国がメキシコ経由などでアメリカに送りつけている、とアメリカ側は激怒し、「21世紀のアヘン戦争」とまで言われる騒ぎになっているのです。歴史に残るアヘン戦争は、英国側が中国人にアヘンを売りつけて、ボロ儲けしました。アヘンなど吸わなければ良い、と思うかもしれませんが、それでも人間を蝕むのが麻薬の麻薬たる所以です。
とりあえずフェンタニルは日本に今の所影響を及ぼしていないので(名古屋で麻酔科医を含む二人が逮捕されたニュースがありましたが)フェンタニルについては、そう言う名前の恐ろしい麻薬を中国がアメリカに流していると言う話(僕も真偽や詳しいことは知りません)だけ、そして現代のアヘン戦争と呼ばれる事態を引き起こしているということだけ、頭に入れておけば良いでしょう。
レアアースについてはしっかり考える必要があります。べつに元素の名前や元素番号は覚えなくて良いから、それが今では金と比べられるくらい重要な物質、例えば半導体原料として、世界のハイテク産業を左右しているということは、気になる存在ではあります。
半導体については、先日「トランジスタラジオ」という記事で、ゲルマニウムダイオードの話をしましたから、読んでいただければ幸いです。元素番号については高校の物理だったか化学だったかの授業で、一番の水素から始まって二十番めまで、暗記させられましたから、こんな表を覚えている人は多いのではないでしょうか。
で、十九番目のカリウム、二十番めのカルシウムまでは、なんとなく聞き覚えのある元素ばかりですよね。しかしこの表で覚えさせられてない二十一番目の元素
- スカンジウム
というのがヤバいやつです。最も小さなレアアースの元素のようです。そのあとはまたチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、と耳馴染みのある元素が続きます。亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム(僕が直接触ったことのある唯一の半導体です)など、これまたよく知られた元素が続きます。次にヤバいレアアースなのが三十九番の
- イットリウム
あとは重い方では皆さんも大好き、聞き覚えのある、七十八番の白金、七十九番の金など重い元素が続きます。さらに重い鉛(八十二番)などになりますと、もう良いよ、という感じですかね。より重い知らない元素が出てきます。僕がこのブログを20年前にmixiに始めて書いた2004年九月の記事を今見てみたのですが、日本人が始めて発見した百十三番の元素「ニホニウム」の話題をちょっと書いてます。
それから20年、もっと重い元素が五つほど発見されているから、日進月歩なんですね。で、より重いとほどいい、という訳ではなくイットリウムの後、
- ランタノイドと呼ばれる五十七番から七十一番からの元素
これらを合わせて17個をレアアースと呼ぶのだそうです。それが半導体をはじめ、様々な分野の工業製品に欠かせない物質なんだそうです。スマートフォン、パソコン、テレビといった電子機器から、電気自動車や風力発電のモーター、LED照明、リサイクル可能な電池、光学機器、排ガス浄化触媒まで、現代のハイテク製品に不可欠な素材です。少量で素材の性能を飛躍的に向上させることができ、磁力や発光特性、触媒作用などを利用した幅広い分野で使われています。
とAIでは言っていますが、僕はそれよりもステルス戦闘機、ドローン、これらの製造に欠かせないのが、このレアアースではないかと感じています。そしてこれらレアアースの90パーセント近くが、中国で生産されているということから、それらを輸入させてもらわなければ、アメリカの最新兵器も作れないと言うことになります。
だから習近平はこのレアアースを譲ってやらないぞ、という脅しで世界の国際安全保障に揺さぶりをかけているということではないでしょうか。トランプ大統領はこれら先端産業を中国に抑えられないように、これは譲れない一線として粘っている。ということでしょう。ウクライナのゼレンスキー大統領がトランプ大統領と初会談で、応援を求めた時も、レアアースを譲ってくれるなら、という条件を出しました。それほどまでにレアアースが欲しいのでしょうか。
実のところ、レアアースは地球上どこでも掘れば出てくる、という話を聞いたことがあります。中国がレアアースを量産できる理由は、広大な土地を持ち、そして山を山ごとブルドーザーで崩してレアアースやレアメタルを採掘する、という手法によるものだということです。そのため森は砂漠化し、黄砂が日本列島まで飛んでくるようになった。という説も聞いたことがあります。
日本だって掘ればこれらの希土類は出てくるのだそうです。でも東京の街を掘るわけにはいかないし、緑を破壊するのは我々の感覚ではちょっとできない。東京の南鳥島という小さな島の近くの領海には、ものすごい量のレアアースが海底に眠っていることが、明らかになっているとのことです。ただ水深6000メートルという海溝ともいうべき超深海ですから、どうやって掘るか。というのが目下の研究テーマでしょうね。
この十七種のレアアース。そしてそれを含む計三十一種のレアメタル。いったいどれが本当に重要なのか、そして何に何が使われるのか、これから勉強していきます。きっと何か肝になる物質があるような気がします。
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